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  「道」
  道はどこへでも通じている 美しい伯母様の
  家へゆく道 海へ行く道 刑務所へ行く道
  どこへも通じていない道なんてあるだろうか
  それなのに いつも道は僕の部屋から僕の部
  屋に通じているだけなのである 群集の中を
  歩きつかれて 少年は帰ってくる
                  黒田三郎

 立高を出るころに知ったこの詩は、ずっとこころにあります。僕たち十六期の三九六とおりの道が、このようにそれぞれどこかへ通じて、四方に拡散していくのだ。永遠に交わることもないかもしれない。自分の道だってあるのかどうか。そのときの感傷もまた、残っています。
 それからのち、あのときの少年や少女は、どんな道へ歩み去っていったのか。
 どこかへ通じる道を、見つけることができたのか。見とおすことができたのか……。
 この詩を思い出すたびに、そう考えてきました。

 あれから三十年以上経って、僕ら立高十六期の集まりで、秋山恵美子さんの想いのたけのソプラノを聴きながら、大野春樹くんが何万回も歌いつづけてきたラテン音楽の情熱に痺れながら、次はそろそろ僕たちの番なのかもしれないと思うようになりました。ただひとつの道をきわめようとして、このふたりがどれほどのそれぞれの艱難辛苦を越えてきたか、僕らはそれを簡単に理解したふりはできない。しかしその素晴らしい結晶をいっしょに聴き惚れることはできます。彼らのプロの仕業、プロの道を。
 周りを見渡せば、あなたも、きみも、もう十分に人生のプロフェッショナルとしての道を歩んできたのですね。プロの仕事師。プロのおっかさん。プロの先生。
プロの凡人……。それをよく知らないだけなんだ、おたがいに。
 そうした人たちに会って話を聞きたくなったのです。プロの感想、意見、実感、プロらしい溜め息のつき方、生活観、仕事観に触れ、あなたにしかできないその仕事のコツ、それは何?と耳を傾けたい。これまでのあなたの道を。










 それを知るために、共通の媒体、メディアを作ることにしました。メディアもひとつの「道」です。そして共通の道にもなりえます。ちょっと広い。
内容については、単なる消息、投稿とか、トシ取ると昔が懐かしくってネということではなくて(ま、それも載せますが)、もうちょっと、積極的な意味合いもこめたいのです。
『そうか、あなたはそういう仕事で、そんなことを考えてきたのか…』
『で、それからまた面白いことが始まりそうですか?』
 そんな、ひとりひとり違うプロの真髄に触れ、紹介し、将来に向けて、自分たちの参考にしたい。あるいは毎号テーマを作って、それに関するノウハウや話題を好奇心いっぱいに聴きたいと考えています。楽しく作って、読む人のタメにもなるという、ちょっとユニークなメディアに仕立てていくつもりです。活動のすべてはボランティアでやりますが、どっこい、印刷する資金がありません。

 そこで、立高十六期会として別項(十六期会の運営について)に示すような活動を正式に、勝手に、提案することにしました。十六期会の活動基金として皆さんから賛助金をいただき、一部をこのメディア『泰山木』の印刷・送料費に活用したいと考えました。十六期会の今後の活動のお知らせや報告もすべて、このメディア『泰山木』を通して行ないます。
 お願いします。趣旨をご理解いただき、ご賛同ご協力いただけませんでしょうか。自分にも取材や編集をやらせろという方は、望むところ! ドアはいつでも開いています。
(創刊準備号のとりあえずの編集代表・岩野浩二郎)
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