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個人を偲ぶ
(河内か子さん)
佐藤 聡子
 我が家の壁のフォトフレーム。その中に幼い娘と息子がにこやかに笑っている、その写真を見るたびにたかちゃんのことを思い出します。2歳の息子が得意そうな顔で着ているカーディガン、それはたかちゃんの手編みなのです。
 我が家にきてはマージャンをし、タバコを吸い、時にはウイスキーを飲んでいた彼女。編集という仕事柄、男性的な生活をしていたけれど、本当は細やかで女性的なことの得意な人でした。料理、編物、手芸、何をやらせても上手で、それも半プロ的。
 妹と3人で海の家で過した時、毎日おいしい料理を作ってくれた彼女。泊まりに行った時に作ってくれたスパゲッティのおいしさと手際の良さ、きっちりと編まれたレース方眼編のバラ模様のカーディガンを目の前にした時の目のくらむような思い、彼女の仕事をアルバイトで
手伝った時のテキパキと仕事をする姿。外での男性的な彼女と内での超女性的な彼女。どちらもまさにたかちゃんそのものだったのです。 亡くなる2ヶ月ぐらい前にひょっこり電話をくれました。私が「元気にしてるの?」というと「血の流れる音がして気になりあまり体調が良くないの」というので、私が「それ更年期の始まりだよ。今私の食べている健康食品とてもいいから送ってあげるよ」というと「広島カープの応援に広島へ行くから帰ってからネ」それで電話をきりあの10月7日になってしまったのです。
 私はショックでした。もう少し早く連絡すればよかったと思いました。でもすべてはあとの祭りでした。たかちゃんは体調がすぐれなくなった時、女性的な彼女の部分が大きくなり、悩み、苦しみ、その細やかさ故に病魔に負けてしまったのだと思います。あれから7年がたち、ともすれば思い出ももううすれがちです。でもあの息子の写真がある限り私は忘れることはないでしょう。いつか時間を作りゆっくり高尾を訪れようと思っています。

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