「影印本」お遊び会

中塚(近藤)瑤子

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 「影印本「(註)」ってご存じですか。私達は古典の影印本を読んで遊んでいます。ことの起こりは神保(長沢)和子さんが所属している東村山市の歴史の勉強会に、私と中村(横山)佳津代さん、鈴木(中村)佳代さんも越境入学させていただき、大変ご迷惑ながら立高四人組として15年以上にわたりおじゃましてきたことからです。
 その教室では、古文書や古筆のコピーや影印本を読む機会が多いのです。初めは全く分からなくて、まるでパズルを解くようで、大変おもしろかったので、立高四人組で別のテキストをさがして、お遊び会をやろうということになりました。
 まず最初は藤原定家筆の御物更級日記を読みとくことにいたしました。私はそのような本(影印本)があることさえ知らなかったのですが、宮内庁三の丸尚蔵館にあるものと全く同じ造りの本が1,300円くらいで買えることにもびっく、りいたしました(国文の学生さんが使うそうですね)。
 初めは1ページ読むのに2時間くらいかかり、大笑いの連続で精神的にとてもよいものでした(私達にとって、読めないということはストレスになんてなりませんから)。私方でいたしましたが、当時、星間在宅の多い大学生の息子がひそかに大笑いをしながら隣の部屋で聞いていて、何を言っているのか全然分からないと言っておりました。
 でも、4年ほど(記録等していないので始めた月日も上げたのも分かりません)で読了しました。この苦心・努力の末、の達成感たるや何ものにも代え難く、まさに「后の位も何にかはせむ」というほどなものでした。

 次に同じ定家流の伊勢物着を遊び始めました。字面にも大分慣れ、内容も少しは分かっているのでずいぶんと早く読めるようになって、ますます楽しくなりました。他のメンバーはいざ知らず、私には月一度のこの日が待ち遠しく、日々の暮らしの中で一番楽しい時で、この日のために生きているようでした。それなのに予習も復習も一度としてしたことがないのも驚きです。このいい加減さも立高時代に培われたもので、長続きの秘訣でしょう。とにかく四人で学んでいると立高の余韻の中にいるように感じられるのが、嬉しいのかもしれません。
 そうこうしている内に3年ほどして伊勢物語も読了してしまいました。
 さて次は何にいたしましょう。また更級日記に戻ったとお思いでしょう。私達も、もうすっかり忘れているので更級をもう一度さらったらいいと思ったのですが、生きている内に、万葉も古今も源氏もその他諸々のものも読みたいと思い、昨秋から能因本枕草子に挑戦しています。この本は欠落、虫喰いが多く文章も分かりづらく、また字面も慣れていないので遅々として進みません。生きている内に読了できそうになく、人生の一大問題をかかえてしまいました。やはり趣味は「カラオケ」のほうが幸せで良いような気もします。
 こんな楽しい会ですが、四人でそうっとやっていることなので、入会希望があったとしてもお断りいたします。私達はいつまでも続けますが。その内、何らかの形で発表会等開きたいと思っております。
*註「影印本」:古書などを写真にとって、印刷したものを複製した本。