寄稿3

今、還暦を迎えた
私たちにできること
三宅(石川)征子


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 今年(2005年)、r泰山木」 の仲間は還暦という人生の節目を迎えますが、私もその一人として、ある種の感慨を抱いています。そして、人間にとって60年は長いのか、社会にとってのそれはどうなのだろうかと、ますます騒がしくなる世の中の動きを感じっつ、あらためて考えさせられます。
 私は、かなり幼い境から、将来は学校の先生になりたいと思っていました。高校入学時はちょうど60年安保で、連日の国会周辺のデモの様子を新聞で見ては、何が人々を動かしているのかという興味は感じつつも、問題の本質はわからないままで (わかろうとしないで) いました。
 ところが高校に入ってみると、その間虜を論じている人達がいて、びっくり仰天しました。そしてともかく新聞を読みこなさなければと強く思ったのでしたやもっとも今では、新聞の問題点の方が目につきますが)。新聞を読む習慣はつきましたが、学力 (?) がアップするというものでもありませんでした。
 でも、貧乏ゆえに夜学へ通う兄妹達には申し訳ないと患いつつ、私は高校生活を楽しみました。だから卒業後、迷わず就職したのも当然でした。この時点ではぽ学校の先生になることは諦めていました。その代わり、会社勤めのかたわら、資格がなくても出来そうなことにはいろいろチャレンジしてみました。公正取引委員会のモニターを始め、東京都の消費者モニターや物価調査員、通産省(現経産省) の消費生活改善監視員等々。そうした中で、消費者運動に関わっていきました。
 消費者運動は、生活を取り巻くあらゆる間鳶をターゲットにしており、当初は添加物など食品問題が中心でしたが、今では環境問題すべてに、多くの消費者団体やNGOが、多様な運動を展開しています。それゆえ関わる人々も多岐にわたり、交流の幅も広がります。そんな中で、現在の保育士養成専門学校講師の仕事を紹介されたのです。私にとっては長年の夢が叶えられることで、嬉しく有り難く、張り切らざるを得ませんでした。
 この学校は、学生数700に対し、非常勤講師が100人以上で、多様な講座が組まれています。私の担当は「保育環境論」。これまで関わってきた種々の消費者間題を、2、3年生のほぼ全員220名に、前期後期に分けて教えています。初めての年は、張り切りすぎ、肩に力の入った私の空振りでした。100人近い2クラス合同の教室は、驚くべき騒がしさでしばしば話を止めざるをえませんでした。一人一人に意見を聞いても反応なし。途方に暮れ、いろいろ考えた揚げ句、毎回授業の最後に、ミニレポートを書いてもらうことにしました。その10分程度の時間の静かなこと! 翌週にはレポートに対する私のコメントをつけ、全員分(無記名)をプリント、配布し、解説するようにしました。忙しいのですが、この方法は結構いいのではないかと自己評価しています。無記名のせいか次第に本音を書いてくる学生も多く、テーマの問題点が鮮明になり発展するように思えるからです。そして学期の終わりには、一人一人にまとめのコメントを渡しています。
 現在もこの方法を採っていますが、書くことで問題点を整理し、把握することができるのではないかと感じます。何人かの学生は確実に文章が整理され、長く書くようになっていますので。今後の課題はどうしたら議論が出来るか、ですが、これは難問です。
 最近の若い人連の就職状況はかなり深刻です。専門資格を持っていてもなかなか安定した職場を確保することは出来ません。若い人達が夢と希望を持てなくなったら、社会は停滞あるいは後退を余儀なくされるでしょう。人生80年時代に還暦はまだ中盤(?)だとしたら、若い人達が元気になれるような社会システムを、再構築するためにカを出していきたいと思います。