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わが人生 |
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01 石井健一 |
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いつも、いつも、『泰山木』ありがとう。
あっという間の六十歳.というのが実感。皆様と一緒のころ私は、一体何だったのでしょう?
剣道部に属しておりました(奥住、竹内、草野、大島、下川、海老沢、吉田、長澤、加藤の皆さん、お元気ですか?)。
まわりの皆さんは、よく勉強をしておりました。
「世界の歴史」がとても好きでした。少し年配の先生の「ネブガドネザール・・・」という、口をプクプクしていう言い方が、心地良かったことを覚えてます。
綺麗なおんなのこがおりまして、皆さんうわさをしておりました。
体育祭の夜、めいっぱい声を出して、歌を歌いまし「玲瓏の水・・・・!」
あっという間に三年が過ぎ、浪人です。
ヘリコプター事故で亡くなったトヨタの坂本君と「一日で14時間は勉強すべし」と、長野県のお寺に40日こもりました。住職の娘さんが.秋篠宮きこさん風で.美しい方でした。御茶ノ水女子大学に在籍というわけで.彼と私が気合を入れられた最大の理由でした。進学は、先ごろ亡くなった丹下健三氏が発端です。
在学中は、キャンパス中がヘルメットと、棹だけ。
私は、さっさと背を向け、一日三回の剣道の稽古と、アルバイト、お金が貯まると全国行脚。そして生涯の友人がたくさんできました。
本が友、建築から逃げ出して、演劇へ。もう大学も不要というわけで、就職し大阪へ。
サラリーマン生活は、たぶん私の人生の中で、一番のんびりしていた時間でしょう。
妻を娶り、長女が生まれたばかりで東京へ転勤。この会社は生涯を託すに足らず、というわけで初心の建築設計へ。
そして、独立。友人と仲間に恵まれ、あっという間の25年。医療、福祉を中心に、住宅はもちろん、工場、また音を大切にする空間など公共、民間を問わず設計・企画しております。
最近の生活の様子です。 |
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1 |
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まみこ(連れ合いです)が友人二人とスペインに行くという(その友人とはおのおのの連れ合いが死んだら三人で、同じ老人ホームに入る約束をしている友人のことである)。
旅行が近づいたある日、食い入るようにパンフレットに見入っている彼女の後ろから、そっと覗くと、
「情熱 の スペイン旅行!!」
とある。
私も5年ほどまえに.スペインに行ったことがある。
その時のパンフレットには、忘れもしない、
「激安 の スペイン旅行!」
とあったことを記憶している。
ただひたすらに、連れ合いが、長生きをしてくれることを祈っている毎日である。
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2 |
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我が家に「タロウ」という犬がいる。私を見つけると、一目散にやってきて、前足(手というべきか?)で私の脚にしがみついて離さない。首を少し斜めにしながら、
「ケンイチ、イノチ!」
といった風情で、私を見上げるのである。私もじっーと彼の目をみつめながら、聞いてみる。
「じゃー何かい、私と死ねるかえー?」
彼の目は一瞬、点になり、間があって、やがて少し肩を落としている風に、犬小屋に戻っていくのである。
いまでも、彼の判断は正しい、と思っている。 | |
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3 |
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連れ合いが、「川越の『丸広』に行こう」と言うので付いて行くことになる。ここいらでは、「丸広」というのは、皆さんでいうと三越、伊勢丹にあたる。
迷子になってはいけない! と思い、必死になって付いていくはめになる。突然連れ合いが立ち止まるので、私も歩みを止め、そして彼女と目をあわす。
すると.連れ合い、
「あなたもするの?」
わたし、
「?」
右手の壁にトイレのマークが目に入りました。
「おまえ百まで、わしゃ九十九まで」の深い意味を理解した一日でありました。
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