還暦つれづれ
  
一巡りして 396とおりの新たな出立
夢があり希望があり 次世代への思いがある
新しい泰山木の生長とともに始まる
私たちの旅路
 
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六十さ−いになったら
 (一年生になった−ら、のメロディーで)
30 松本節子
 子どものころから好きなことが三つありました。
 一つは音楽で、学校でも音楽の授業が一番の楽しみでした。
 ピアノも習わせてもらいました。私なりには努力したと思いますが(例えば、発表会の前ともなれば一日4時間から5時間練習したり)、本当の頑張りはありませんでした。
 二つめは手仕事。ミシンを出してきてちょこちょこと愚にもつかぬものを作ったり、端切れをはぎ合わせてみたり、レースを編んでみたり……。これは今でも大好きで、手仕事のアイデアだったらバーゲンセールしたいくらいあります。ただし技がないので、多くの場合、作品化してはおりません。それにどの道、大したものであるはずもありません。
 三つめは活字です。読書、というのとはちょっと違いまして、活字ならなんでもいいということですね。一時は家の中に目を通していない印刷物はない! というくらい手当たりしだい、なんでも読んでいました。私のかわいい活字ちゃん、という感じです。
 中高年での再就職に際して、この三つの中で仕事になりそうなものが結局最後の[活字]でした。校正の仕事です。学校を出てから二年弱、この仕事をしていたことで、ブラッシュアップにはあまり苦労はありませんでした。ただし、校正の仕事で99点ということはありませんで、OKか0点のどちらか(これでいえば『泰山木』の校正は0点続きです。申し訳ありません、ということになります。この緊張が快く感じられた時期も確かにあったのですが、最近はそれに耐えられなくなってきました。
 これが60歳ということなんだな、と実感します。
 これに対し、以前はそれほどでもなかったのに、最近とみに楽しくなってきたことがあります。それは庭仕事です。きっと代々農業で暮らしてきた家に育った者の中に脈々と流れるDNAがそうさせるのだと思うのですが、庭に出て緑に触れる時間がどうも一番自分らしい時間のようだと感じはじめました。
 これからは、庭仕事、くだらない手仕事、そして音楽、この三つを友として暮らしていこう……。これが、60歳を迎えて思っていることです。