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 ML(メーリングリスト)って、知ってますよね? 電子メールを通常の一対一ではなく、一対多数で交換できるメンバー制のバーチャルなメール空間です。このMLが立高一六期の仲間にできて、はや五年目。毎日いつでもいろんな意見が飛び交い、遊びから真剣な議論、小説まで投稿されて、自由にお喋りし合っています。
 2007年1月現在、参加者は56人。投稿されたメールの数はなんと7000通を超え、月平均150通以上の盛況振りです。
 また、このML(Yahoo TACHIKO16)のほかにも、j十六期にはブログ(BLOG)のグループ(TAISANBOKU2)も平行して開催されており、こちらでは「簡単経済講座」始め、「植物の育て方教室」、「山と旅行」、「戦後の記録」、「気象関係」、「料理」など多彩なカテゴリーごとに、自由に写真や文章が投稿され、それへのコメントが行き交っています。
 そんなあるとき、これらのメンバーから、エッセイ集を何冊も出版してきた木村(旧姓山下)富美子さんをお師匠さんに担ぎ出して、俳句を習いたいというアイデアが出されました。木村さんは「教えるなどということはできないけれど、一緒に楽しめるなら・・・・・・」ということで快諾。それ以降は俳句が活発に投稿され、すぐに講評が返されるようになりました。そしてついに、バーチャル句会「ハロー季節」が催されたのです。
 2006年10月、この句会第一回の兼題は「小春日」「落葉」「山茶花」。これに加えてMLに添付したイメージ写真三点の兼題も加えられ、合計六つのテーマのなかから投稿者は好きな題を選べます。投稿者は28名、ひねり出された句は、なんと107句も! と絶句したほど。
 選考・表彰は二通りあって、ひとつはMLメンバーの投票による「互選」。もうひとつは「選者による選」とのダブル・チャンス。第一回の選者には師匠・木村富美子さんにお願いしました。しかも詠むだけではありません。互選でどの句が選ばれるでしょう? と入賞者を当てた人には「ぴったり賞」が当たるという企画も加え、俳句投稿者以外の人たちにも楽しんでいただきました。
 集まった107句の水準の高さには、あらためて驚くばかり。12月のクリスマスの日、選者の木村さんからの選考発表をもって、締めくくられました。以下に、選考結果と選者の言葉ともども、楽しかった句会の余韻をお知らせしましょう。後日談ですが、俳号で投稿した人が何者かを推理する楽しみも生まれて、未だに謎の人物もいます。 これを機に、BLOGの中にも「俳句/和歌講座」が新たに加えられていますので、学びたい方はぜひ参加してください。

「互選」入賞(投票)

一位 父植えし山茶花枯れて風の道

Ryo
二位 庭そうじ落葉の顔の豊かさよ

弓削陽光
三位 観音に野菊手向ける背の広し
小春日にはずむ心で帯合わせ

かほる
岸本郁江
四位 語らいの老いの華やぐ小春かな
いつわりの言葉やさしき小春かな
小春日にゆるり脚組みカフェテラス


地図鳥
Ryo
五位 小春日や布団干す手に幸運び
小春日や僧侶ゆっくりペダル踏む
小雀の跳ねて落葉の吹き溜まり
青葉いづ白神の地の駅静か
小春日の空を突き裂くイチョウの木
シャッシャッと落葉ラッセル尾根下る
小春日に木洩れ日ゆらす枯葉かな

富原無量
松本節子
富原無量
弓削陽光
山岸忠雄
Ryo
山岸忠雄
ぴったり賞
人気順位一位から五位全部当てる 該当者はなし
ぷったり賞
アマーゴ 中平(惜しい! 三位のみ外れ)
ぺったり賞
Michi堀池、白井ちーこ、Geta青木
ぽったり賞
カコ山岸、みゅーたろ永野、パブロ無量
(MLの中で使われているニックネームで発表することをご了承ください)



兼題「石仏」のイメージ写真
兼題「線路」のイメージ写真
兼題「鳥居」のイメージ写真

木村富美子さん 選・評

一席 小春日を集めて子らの笑い声 富原無量
「小春日を集めて」がよい。穏やかな暖かい日を浴びて幼子らが無邪気に遊んでいる笑い声が聞こえそうな秀句だ。

二席 小春日やゆるり脚組みカフェテラス Ryo
原句は「小春日に」になっていたので、残念ながら一席にならなかった。この句では、「ゆるり脚組み」がいい。穏やかな午後のカフェテラスで憩う姿が目に浮かぶ。

三席 玉虫に冬の宿貸す石観音 青島
「玉虫」は夏の季語だが、この句の場合は、「冬の宿貸す」の言葉で生きている。作者は、法隆寺の国宝玉虫厨子が頭にあったのだろうか。野仏の前の石積みの写真にぴったりな句だ。「虫たちに」では平凡。

佳作 父植えし山茶花枯れて風の道 Ryo
山茶花を植えた父は亡くなり、その山茶花も枯れて、庭にぽっかり空間が。「風の道」がすべてを表現している句だ。

小春日やはずむ心で帯合わせ 岸本郁江
原句は「小春日に」だが、やはり「小春日や」のほうがいい。作者はお茶会にでも出かけるのだろうか。「この着物にはどっちの帯が似合うかしら」。幾つになっても変わらない気持ち。

湯けむりに落葉ひとひらまた三ひら 落葉
美しい紅葉を眺めながら露天風呂に入っていたら、落葉が舞って来た。「ひとひらまた三ひら」の表現がいい。

最果ての線路の先や冬の待つ 松本節子
「最果ての線路」の先に待つのは冬の季節のみ。「最果て」と「冬の待つ」で寂しい句だが、ドラマチックで好きだ。

いつわりの言葉やさしき小春かな 地図鳥
作者は病んだことがあるのだろうか? 「顔色いいじゃない」「たいした病気じゃないってさ」。自分は病気のすべてを知っているのに、偽りの言葉を掛けて慰め励ましてくれる人たちは、小春日のように温かで優しい。観念句はあまりよくないが、この句はそれを超越している。

雑木山くぬぎの落葉ひといろに 松本節子
雑木山だから、もっといろいろな色彩があってもいいはずなのに、茶褐色のくぬぎの落葉のみ。観察、写生しなければできない鋭い写生句だ。

一年の思い出集め落葉焚く 地図鳥
芽吹き、新緑、緑陰、紅葉と木々も変化があったが、日々の暮らしの中にも、さまざまなことがあった一年。それらをみなかき集めて、落葉と共に焚く。「炊く」は間違い。

小春日や僧侶ゆっくりペダル踏む 松本節子
檀家の法事に向かう僧侶だろうか。僧侶と分かるのだから、法衣を着ているにちがいない。そんな姿で僧侶がゆっくりペダルを踏む様子をうまくとらえていて面白い。小春日に合っている。

雀らの跳ねて落葉の吹き溜まり 富原無量
原句は「小雀」。雀は小さいし、数羽集まって行動するから「雀ら」とした。「雀らの跳ねて」が動、「吹き溜まり」の静の対比がいい。

目を細め山茶花日和縁の猫 かほる
小春日和でもいいような気がするが、それではありきたり。「山茶花日和」としたところが、この句のいいところ。

総評(木村富美子)
 第一回「ハロー季節」に107句の俳句が投稿されるとは思わなかったので、選者の一番バッターをお引き受けしたが、あまりにも沢山だし、どの句も上手だし、嬉しい悲鳴を上げてしまった。
  選句は大変な作業だった。これは誰の句かなどと詮索せず、白紙の心で107の俳句と向き合い、選句するよう努めた。老いた愛犬を詠んだ句には、胸が熱くなったし、切ない青春の別れを詠んだ句には共感があった。
 ブログの写真からさまざまなイメージをふくらませたいい句があった。まだまだ心に残る句は沢山あるのに、限られた句数では選びきれない句が多く、もったいないし、残念である。
  「能ある鷹は爪を隠し」ていらした方が多く、MLで私の拙い俳句をにやにやしながら眺めていらしたのかと思うと、穴があったら入りたい気分だ。
 どの句が初めて詠んだ句か一目瞭然でないところが、十六期のみなさんのレベルの高さを示している。ただ、もう少し推敲したら、もっといい句になるのに、と思う句もあり、言葉が適切かをもう一度考えてみることが大切だ。
 選句は楽しかったが、自分で句を詠むよりはるかに大変で、難しかった。

* * * *
 むりやり「師匠役」を押し付けてしまったが、木村富美子さんは仲間意識を最も大切にジョークも交えながら、人に、動・植物に温かい視線を向けたメールを発信してくれています。今回も「不肖の弟子たち」に交ざってご自身も投稿されました。

  ★ 語らいの老いの華やぐ小春かな
  ★ 野仏のお顔それぞれ信濃冬
  ★ 小春日や外人墓地に日本名

 日常の中で季節を探し、感動する心を養い、新鮮な気持ちを保つことができる俳句。五・七・五に言葉をおさめるために頭の体操にもなる。より多くの俳句仲間が増えることを念願します。 まずは、十六期のMLに参加しましょう。参加申込は下記のメールアドレス宛て、管理人の片山君に申し込んでください。
  (TACHIKO16-owner@yahoogroups.jp)
 あるいは、
  (kaze-k@cameo.plala.or.jp)

(十六期ML・泰山木ブログ・スタッフ、若井千鶴・中島進・須永譲・岩野浩二郎・片山布自伎)