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●それを全部、一人でやるんですか?
○浅井 欧米では美術館の仕事ってそれぞれ専門化されているんです。学芸員つまりキュレーター(curator)って、作品の研究をして、展示企画を行なう一方、コレクションを収集して殖やしていくときの基本的なデータを押さえる役目の人で、美術館の仕事の要ですね。そのほかに、コンサバターといって保存の仕事をする人。エデュケーターという美術館教育・普及の担当者。収蔵品の出入りを全部記録していくレジスター。後はデザイナー。でも日本では学芸員を「雑芸員」と言ったりしてる。最近では大きな公立の美術館で学芸員が一〇人も二〇人もいるようなところでは仕事の分担ができてきているんですけれども、それはまだ多くない。うちは二人で全部やってます。 ●学芸員って、資格が必要なんでしょう?
○浅井 ええ、国家試験か、大学での単位取得で。私の場合は大学で資格を取りましたが、最近では学芸員の資格取得や質をめぐって問題がいろいろ出てきていて…。
 既婚で子持ちだったのがプラス

●そうですか…でも、どうして学芸員になろうとしたの?
○浅井 ええと、この富岡美術館に来たのが、学部を卒業してから十年めかな。
●学部って、芸大でしたよね。
○浅井 ええ。それで大学院へ行って、学校の研究室で非常勤の助手をしばらくやって、五島美術館に行きました。雇ってくれたのは併設されている大東急文庫なんだけど、そこで足掛け三年ぐらい非常勤というかバイトをしてそれからこの富岡美術館。ここは今年で創立二十周年なんですが、私が入ったのがオープン一年後の昭和五五年です。すごいひょんなことで入ったんです。
●え、なに、ひょんって?
○浅井 たまたまこの館の開館のときからやっていた学芸員の人が、結婚してやめるというんで、前の館長が、五島美術館の人に、誰か後釜がいないかと聞いてきたんですよ。そのころ女性なんか採りっこ
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