ないって時代なのよね。私は女だし、その頃もう子供もいたし、それもまだ小さいのがいたし、採りっこない。でもね、私は仕事をしていきたいんだということを五島の人たちに分かってもらいたかった。で、そのデモンストレーションのために受けたんです。受かるわけないと思っていたら、受かっちゃったんですよね。
●成績がバツグンに良かったとか?
○浅井 ううん、ぜーんぜん違うの(笑)。その理由がふるっていて、まず規模が小さかったから男の人に出すようなお給料は出したくなかった。次に、前任者のように結婚してやめられたんじゃ困るんで、結婚している人のほうが良かった。でも結婚していても子供ができたからやめますっていうのも困る。こいつは結婚しているうえに子供がいるんだから、そうそう簡単にはやめないだろう、って。私がマイナス条件だと思っていたことが全部向こうの人にとってはプラス条件だったんです。 |
●えーっ、そんなことってあるんですね(笑)。ここは結構地味な美術館だけど、浅井さんにとったら、コレクションとかが魅力だったわけ?
○浅井 開館してからまだ間もない頃だから、展覧会も結構賑やかで、今回みたいに禅宗のお坊さんの書ばっかりとかいうのではなくて、中国の明、清の華やかな陶磁器がいっぱい。入ってすぐの部屋にある、重要文化財の埴輪女子像、以前に作家の志賀直哉さんのところにあったという木造彩色の平安時代の菩薩立像とインドクシャーナ朝の石造の菩薩立像の三像。ま、一体仏像があるからいいかと思ったんです。それ以上なにも考えなかった。
●あ、仏像が好きなんだ。
○浅井 私は、学校では仏教彫刻史を専攻していたんですね。
●仏教彫刻史? 何でそんなものやる気になったのかしら。
○浅井 そんなこと聞かれても答えに困るんだけど。 |