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書けば書くほど暗くなってきた。でも、そうでもないんだよ。オックスフォードのちょっと郊外へ出るとコッツウォルズというゆるやかな丘陵地帯になってて、昔ながらの村が点在してて、かやぶきの家なんかもたくさんあって、緑の中にかやぶきの石造りの家がならんでるところは、けっこういいもんだ。
それにね、これしかできないだろっていう気持ちもあるしね。時間があろうとあるまいと、同級生のみんなより遅れていようとなにしようと、これをやるしかないだろ、ってわけだ。だいいち、大学卒業のころから五年くらい前までずっとなんにもしないできたんだから、自業自得なのさ。「一つでいいから論文を書いてくれ。はやく教授になってくれないと、あとの人に迷惑だから」って、主任教授にせかされてるくらいだからな。いわゆる「年貢の納めどき」ってやつかな。いずれにしろ歳なんだ、こりゃあ。
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酒井一家(下)とブレナム宮殿(上) |
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