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木村富美子

 私は、十年来、慢性呼吸不全のために、自宅で酸素を吸いながら暮らしている。外出もあまり出来ず、同期会の通知をいただいても、いつも欠席ばかりだ。出席した妹から、当日の様子を聞いては、次回はぜひ懐かしい旧友に会いたい、と思いながら未だに果たせない。
 昨年、夏風邪から肺炎になり、気管支喘息の発作も併発して、呼吸困難に陥り、救急車で運ばれたまま、四十日も入院してしまった。その時の身体的な苦しさと、死の恐怖が忘れられず、入院中から不安症になり、退院後それはますます悪化して、独りで

いると怖くて仕方がない精神不安定な状態が続いた。また発作が起きて窒息しそうになったらどうしよう、と考えると、落ち着いて寝ていられず、静かに、読書をしたり、音楽を聴いたり、テレビを観ることも出来ず、酸素のカニューレホースを引きずって、やせこけた熊のように、部屋をうろついていた。いっそ死んでしまったらどんなに楽だろう、と思いながら、本心は、死ぬのが怖くて仕方がなかったのだ。なんで私ばかりが病に苦しめられなければならないの、と神を恨んだりしていた。
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