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登代子 私も主人の転勤で仙台に来て、あっという間に十五年たってしまったわ。私も主人も東京で育っていたので子供達は一度地方で育ててみたいと思っていたので、仙台に来ることには抵抗がなかったの。東京に住んでいると、仙台の情報はほとんど入ってこないので、その頃小学生だった息子は「仙台には本屋はあるの?」って聞いたのよ。仙台駅を降りたら、それまで住んでいた府中よりもはるかに都会で、息子がびっくりしたの。主人と大笑いしたことを想い出します。
苗 子 仙台は、ほどほどに大きい都市で、買い物も便利だし、山や海も近いし、食べ物もおいしいし、とてもよい所だと思うわ。あまり宣伝して、これ以上人口が増えない方がいいと思うけど。
登代子 本当にそうね。苗ちゃんに東京から手紙を書いたときには、字○○と書くので、すごい田舎かと思っていたけれど、来てみたら仙台駅から電車で十分のところだったのでびっくりしたわ。東京に住んでいたら、都心から電車で十分の所なんて一等地よね。
苗 子 初めて仙台で会ったのは、とこちゃんの家を訪ねた時だったかしら。たまたま主人が近くの病院に入院していて、下の子供を連れて伺ったのね。
桜の名所の三神峯公園のすぐ後ろだったわね。とこちゃんの息子さんが小学生で、うちの子と遊んでくれたのよ。その後、何年かして私の両親が東京を引きはらって、仙台に住むようになってから、私の家の方にも来てくれたわね。
登代子 ご両親の家は苗ちゃんの家から歩いてすぐのところにあったので、そちらにも伺ったわね。よく手入れされた庭を見ながら、お母様の立てて下さったお抹茶をいただいたわ。その時、お母様が「夕方になると、近くの田んぼから蛍が飛んできて、網戸にはりつくのよ」と言うのを聞いて「今時そういうところがあるなんて」とうらやましく思ったわ。ところで、私の母も二年前から仙台で私たち夫婦と一緒に住むようになったの。その時も、母と一緒に、苗ちゃんのお宅に伺ったわね。
苗 子 そうね。私の母とあなたのお母様が共に下町育ちで、二人で話がはずんだのよね。意外だったわ。
登代子 仙台に住んでいても、立高の方々に来ていただいたり、秋山さんの歌を聞きにいったり、いろいろなことがあったわね。
苗 子 ちょっと、想い出してみようかしら。
(一九八七年頃?)秋山恵美子さんの映画(椿姫)
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