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同期の先生たちに聞く教育現場の現状

P.11

(10)最後に、教育現場であなたが感じておられることを何でも書いてください。

○幼稚園 教育の大切さが叫ばれながらも、学校教育のあり方が抜本的に改善されない現状。管理職の質の低下。
○小学校 子どもの本質はそんなに変わってはいないと思う。親や周囲の希望に合わせようと必死になっている子が多い。一方大人は世間的に見映えのする子供でなければ可愛くないと思っているようだ。外見や成績が良ければ全てOKのような子育て。又、学校はといえば、真剣に教育について話などしなくなっている。卒業生を今回出したが、真剣にいじめやその他諸問題について子供に対峙するのは大変だった。何もしないでそっとして送り出せというのが、管理職の姿勢。子供の権利条約や憲法についてしっかり学ぼうと取り組み良かったが(子供や親の反応)、卒業式には複数の人間が教育委員会から来て、メモ等とられた。このような状況が自由な、生き生きとした人間をつくることをますますむずかしくするのではないか(日本全体の世相)。公立学校の場合、採用者はイエスマンのみというような現状です。学生運動経験世代がもうすぐ退職でいなくなります。その後は学校が大きく変化するでしょう。
今の職場では、大部分の教師が真面目に勤務し、子どもたちへの指導も熱心に行っています。しかしかつて勤めていた職場の中には、指導力不足、子どもへの愛情がない,教育への熱意がない、というような人も何人かいました。それでもそのまま勤務していましたので、最近話題になっている「教員の資格に年限をつける」ということも必要ではないかと思っています。
子どもをとりまく状況の根本を解決しようとせず、目新しいことを打ち出すだけの「教育改革」に救いようのない不安を感じている。子どもは日々、色々なかたちで悲鳴をあげている。学校はみんなと同じにできることを要求しすぎる。「フツー」になることを要求する中で、矛盾が生じてきている。
管理が強化され、子どもたちをどう育てていくかということ以外に心を使う大人が増えているのではないか。教育はすぐ結果が出るものでもないと思うのだが。
小学校で、演劇教育をほそぼそと続けてやっています。最近、所沢で知念正文さんが子供ミュージカルを作り、偶然私の学校の教え子の4年生の女の子が出演しました。脚本そのものもすばらしいもので、子供達も生き生きと演じ、感動しました。音楽主任会でも話題になり、子供達への影響ははかりしれないものがあったようです。
○中学校 先行き不透明な次代で、親の世代も精神的に不安定な状況にある。その中で子供だけが健全に育っていくわけがない。学校は社会の縮図だと思う。昔の我々のように“輝かしい未来”への夢をいだけない若い人達を気の毒に思う。
○高 校 新旧交換の時かな? と思う。
親に管理されて育った子ども達があまりにも素直で従順なので心配である。大人をはねのけるパワーがない。
○大 学 教育現場を尊重し、生命および“生きること”を重視した教育を目指すべきだと思う。教育現場へより多くの資源を投入し、新しい教育のあり方を早急に確立し、実践する必要がある。
日本は建て前と本音が使い分けられすぎている。教育の公平性は大切だが、必要なのは機会が均等に与えられていること、失敗したらやり直せる寛容性が備わっていることだと思う。しかし、これまでの日本の教育は、ほとんどの教科が小学校からずっと,全ての科目にわたって、将来専門家になるために必要となる学習を全員に強いてきた。これが教育が空洞化する最大に理由。失敗のやり直しがきかないから、脱落したとき、自棄になるか、閉じこもるしかなくなるのだと思う。こういう社会を根本から改め るのは絶望的だと思う。
前回の教育指導要綱より、高校物理は「理解」から「暗記」(この問題にはこの公式を使う)に変わった。急がば廻れ、は許されなくなり、急がば急げ、と変質した。巨大技術に支えられている社会基盤は、現状維持さえ困難となろう。
学力の低下が叫ばれて久しいですが、大学の教員にもかなり基礎学力のあやしい人がいます。これは忌忌しき問題で、只でさえ基礎学力不足で入学した学生の教育をまともにできないと思います。大学教授の業績は論文の数で評価される傾向が非常に強いので、論文さえ書いていれば、自分の研究分野に関する基礎知識(授業に必要)があまり無くても構わないと考える人が多いのが実情です。基礎学力が無くても論文が書けて、(いいかげんな?)授業ができてしまうのは変な気がします。学力低下に関連していますが、文部省は受験生の負担を軽減することに重きを置き、AO入試に代表されるように入試の多様化、即ち学力をあまり問わない(?)選抜方法の導入を求めています。その狙いが分かりません。我々の次代に比べれば、今の学生は非常に楽をして大学に入学しています。これ以上、楽をさせてどうしようというのでしょう。
○教育
 委員会
学校教育は脱皮の最中にあると思います。理念と現実が様々なところで食い違って、見た目には崩壊や逆流の危険に満ちていますが、私は大局のところでよりよく生まれ変わると楽観しています。
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