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★消費者の動向に戦略を合わせはじめたメーカー
 また日本では、遺伝子組み換え食品であるという内容が、やっと来年2001年の四月から表示されることになりました。しかし豆腐、油揚げ、湯葉などの豆腐関連、トウモロコシの粉を使ったスナック菓子などのみで、それらは日本で流通している遺伝子組み換え食品全体のわずか1%にすぎません。
 私たちは、全部に表示をすべきだと働きかけているのですが、なかなか難しい状況です。
 しかしこうした農水省の発表を受けて、メーカー側の自主的な対応はかなり早く、例えばメーカーのキリンは99年に商品化して流通させるといっていた遺伝子組み換えトマトを断念しました。実は私たちは、キリンがそれを発表したときから消費者団体を通じてビールの不買運動を展開しており、ちょうどこの時期にキリンは業界第一位だった売り上げ高をアサヒに抜かれたんです。
 つまり、消費者を敵に回すと本体のビールも危ないという配慮がそこに働いたようですが、同時にキリンはライバルのアサヒやサッポロを出し抜いて、ビールの副原料であるコーンスターチに遺伝子組み換え品は使わないと発表したんです。当然アサヒもサッポロも追随したこの戦略は、アメリカの遺伝子組み換えトウモロコシの生産現場にまで影響を及ぼし、生産量が激減したのです。アメリカの専門家からは、トウモロコシだけでなく、綿、大豆のいずれもさらに減るのではないかとの推測が出ているようです。
 その見直しのため、遺伝子組み換え大豆と在来型大豆との収量の比較をやったところ、従来型より収量は減って農薬の使用量は逆に増えるということが判って、かなりインパクトの強いレポートとなりました。
 こういうことがあると農家は遺伝子組み換え製品は先がないかも知れない、しかもヨーロッパや日本での反対運動や表示のことを考えると先行き大変だということで、一番の生産地であるアメリカでは在来型の種子に戻る可能性も出てきます。
 これに関連して日本では業界の自主基準が強化され、国産品が従来50%以上であれば可能だった「国産大豆使用」の表示が、2000年の4月からは100%使われたものでないとできなくなりました。これらの動きは、メーカーや業界が消費者の動向に配慮しはじめたことを示したものです。
 すなわち消費者である私たち一人一人は、毎日食品を選ぶということで選択権を行使しているわけです。これは消費者の大事な権利で、私たちが何を選ぶかが、作り出す側に大きな影響を与えるようになってきたわけです。健康に過ごすためには、そういう意識した消費行動が大事だと思います。
 最後に、食をめぐる新しい状況の一つに狂牛病があります。狂牛病はもともとスクレーピーという羊の病気で、感染すると脳がスポンジ状になって神経系統がやられ、ふらふらになってしまうという死亡率のたいへん高い病気です。その羊の脳や臓物、骨などを集めて高蛋白の飼料として作り換えられているんです。
 またこの飼料には羊だけではなく、牛や犬猫などの臓物や骨など、本来廃棄される部分も含まれていると言われています。それを食べた牛に狂牛病が発生し、その肉を食べた人間にクロイツフェルトヤコブ病という病気が発生しているわけです。イギリスの報告では牛だけではないようです。
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