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早川正洋
 現在は京都西陣に住む

 ジプシーについてぼくの感想をいくつか。
 世に言われるごとく基本的にはアブナイ人たちなンでしょう。バルセロナにリセゥ市場という大きな市場がありかなりのジプシーがいます。物乞いの老婆は誇りが高く、何が気に入らなかったのかけっしてスペイン人からの施しは受けなかった。若い日本人留学生諸君と市場で友達になった。その時は語学校に入る何ヶ月か前でぼくは日本語と英語を少々話せるだけだった。市場のパブで市のみんなと友達になって呑んべはすぐ友をつくる。なかでもジプシーのじい様とは特別になった。
 なん日かすぎると若い人達にはバイトとかで会えなくなった。じい様は英語はもちろん日本語なんておよびじゃなかった。こちらは日本語が少々。でも毎日呑みあるいた。ある日歯が痛くなってどうしようもなくなった。

 彼が何処かに行って何か薬を持ってきた。自分で飲んで見せて飲めと身振り。全然気にしていなかったのだが、彼は気を遣った。リカヴァリの失敗ですべての写真を失って、ようよう復元できた写真の中には、彼のは無かった。
 と、言う訳で別のパフォーマ・踊り子の写真。彼女もジプシーでいい娘だった。ポルトガルのポルトは港町で河口から海を巡る遊覧船が沢山行き交っている。ある日乗船すると、しばらくして船長に別室に呼び込まれた。ここでももちろんポルトガル語が話せるわけがない。すくない英語でなんとか話し込んで彼、曰く「これは売り物じゃない。お前どうだ」とそこで酒盛り。乗客には一杯のドリンクが付く。乗ってすぐポートワインを飲みだしたぼくを、気にしていた。ニオイを感じたらしい。ポートワインというのは特別で、値段は所謂ワインの2〜2.5倍する。ワインを寝かせてから2〜3年してブランディと合わせてまた、寝かせる。度数は当然高くなる。それに加えて甘味が増す。日本の赤玉ポートワインとは似て非なるもの。似てもいないか。船長はジプシーだと言った。
 グラナダに居た。普通はアルハンブラ宮殿でしょう。行かないほうがいい地域のひとつにジプシー地区がありロス・タラントスと言うタブロオがある。(タブロオ……フラメンコを見せるスタジオ)通りは普通の街並みでヨーロッパのことですから、石造りの建物です。ところがそこは皆、洞窟で、前面だけ家らしくシツラエテあるのです。独り旅ですから、いつも「危険が一杯」状態です。なんとか知り合いでもつくってと思っていたのですが、日はズルズル経ってしまう。思い切って9時オープン11時までというのに出かけた。ぶらぶら歩いて、開演1時間前に着いてしまった。まだ日常生活。タブロオの前で、女の子がお母さんにフラメンコの練習をみてもらっていた。聞くと9歳だと言う。黒服が寄って来て「なにか飲むか」と聞く。ワインを、と。しばらくすると「もう1杯飲むか」と。そこで又1杯。そのうち時間で、いかにもアメリカ人という人達がゾロゾロ集まって来た。席につくと飲み物の注文をとりにくる。ワンドリンク付きのチケットです。わたしはもう飲んでしまっていたのですがごく普通に聞いてくれる。女の子は踊りの最後に「どお!?」と見栄を切った。堂々としたものです。
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