ヴィジュアル本が大流行である。
古典・歴史の世界も同様で、本書も写真をふんだんに使いながら、古典としての平家物語を平明な口語文に訳し、見やすく分かりやすい絵物語仕立てにして、平家一門の栄枯盛衰を描いている。
以下は、本書を手にし、ページを繰っている時に、思いついたままを文章にしたものです。
「桜井の別れ」という言葉をご存知だろうか。自分たちより前の世代の、戦前の教育を受けた人なら誰でも知っている歴史上の有名な(定番の)一場面である。 「頃は南北朝時代、圧倒的な軍勢で押し寄せる逆賊足利尊氏軍に対し、楠正成は南朝方の楯となって、死を覚悟した湊川の決戦を挑まんとするその前日、泣いて父に同行を迫る息子正行を前に、次の再起を期するようこんこんと説き、涙をのんで故郷河内に追い返すのであった」
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地元のある書店で「小島孝之訳」に惹かれ、自分は一冊の歴史絵本を手にしていた。書名は「週刊日本の古典を見る・平家物語」
高校時代、小島孝之君(あえてそう呼ばせていただきます)とは同じクラスになったことは一度もないのだが、「小島先生は……」とか「小島先生が……」と敬意のこもった言葉で尾崎君がよく話題にしていたので、自分のほうはよく存じ上げていた。
ページをめくっているうちに、なぜか、自分の幼少時代に見た歴史絵本の中の「桜井の別れ」の場面を思い出していた。そこには父楠正成と息子正行の対面の図が描かれ、その脇には前述の「頃は南北朝時代……」そんな文章が添えられていたと思う。自分はその頃と今の歴史絵本の違いを考えさせられていた。
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