○浅井 お客さんは少なくなっていますね。ただでさえ少ないお客さんが、去年ガクンと減って、世の不況をもろに受けて今年もそのまんま。世の中には数え方によって五千とか六千というたくさんの美術館・博物館があります。近いところに、自分の贔屓の美術館をもつといいと思うんです。ここも、人数が少ないけれども、楽しんでいってくれる人たちがいる。食べて、着て、住むということと同じに、自分の国の文化を自分たちが育んでいくことの大切さを分かってほしいのですが…。ここは東洋美術が中心だから、何かとっかかりがないと楽しむことができないので、そのお手伝いをするのが私たちの仕事だと思うんです。自分の気に入ったところから、焼物が好きな人は焼物から、絵なら絵から、そこから日本のものをいろいろ見ていく、自分はこんなの嫌いだという反発から入っても構わない。
●そのとっかかりというか、素人受けです。今の季節は椿とクリスマスローズくらいしかないんですけれど。そのうちに貝母とか。一番奥は私達の花壇に |
して、野草を植えています。それと、開館当時、椿の苗をたくさんいただいたものが、今ずいぶん大きくなっています。
●ここはお屋敷なんだから、お庭と一体になって全体を見せるというアピールはどうなんでしょうか。ビルのワンフロアの美術館なんてつまんないでしょ。作品が並んでいるだけで。
○浅井 そうですね、この美術館に誇れるものがあるとしたら、ふらーっと来て、庭といっしょにひとときを楽しんで帰る。その場を提供するということでしょうか。超一級品はないけれど、入門編として見るにはそこそこ楽しめると思います。仕事をもって忙しい人も、年をとって会社をやめて時間ができた人も、自分の場所、自分の世界、もっていたほうがいいですもの。それが美術であれ、映画であれ、音楽であれ、ね。
●浅井さんがここで目指すのは、それなんでしょうか。ありがとうございました。
(旧姓/浅井=成田、松本=井上、岸本=斎藤) |