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★生き物は遺伝子を運ぶための容れ物にすぎない?
 さて、「日本子孫基金」の設立の翌年、記念に連続講座を行いました。私たちの活動に顧問的な立場で関わってくださっている先生たちの講演です。それを一冊の本にまとめました。
 そのなかで、現在は東京医科歯科大学名誉教授でおられる外村先生という方が、「人間は遺伝子を運ぶ船である」というタイトルでお話をされました。
私は最初にそのタイトルを聞いたときは、とても容認できませんでした。それぞれ自分の意志で生きている私たちが単に遺伝子を運ぶ船であってなるものか、という思いがあったのです。ところが、最近の遺伝学、特に分子生物学など、バイオテクノロジー関連のニュースの中では、まさにこのことが中心になっています。私たちは単に遺伝子を運ぶための仮の容れ物、乗り物に過ぎない。つまり、心もすべて遺伝子に支配されているというのが、今の大方の遺伝学、最新のバイオ関連の考え方です。私たちは結局、遺伝子に操作されているのだと。
 ところが、分子生物学者のなかでも、「心は遺伝子を超えられるか」という問題をテーマにされる方が出てきているなど、遺伝学はいま多様で複雑な展開をみせています。
 この連続講座で、「子孫」ということを法律的な立場から話をしてくださったのが弁護士の神山美智子さんで、日本子孫基金の代表も務めておられます。神山先生は、日本の憲法の中に「子孫」がどう位置づけられているかを示されました。法律というのは現在生きている人間を対象にしているので、子孫という言葉は憲法前文と母子保護法の中の3カ所にしか出てきません。
憲法前文というのは、後半の部分はリンカーンがゲティスバーグで行った演説をそのまま持って来ていて非常に格調が高いとおっしゃっていました。法律の中では子孫という言葉は出てこないけれど、前文に出てくることの意味合いをよく考えるべきとのことでした。
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