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★国際会議で対立するアメリカとEU

 ところで、今日のメインテーマである遺伝子組み換え食品に関して、今年(2000年)の3月、議長国である日本の幕張メッセで国際会議が開かれました。私たちの団体も、アメリカとイギリスの消費者団体と組み、国際消費者団体として国際会議に参加できるオブザーバーとしての資格を得ましたので、これに参加しました。
 遺伝子組み換え食品など、世界のさまざまな国際基準を一手に作っているのは、FAO、WHOの下部組織にあたるコーデックス委員会というところですが、その会議にも私たちは自由に参加できる資格を得たんです。
 このコーデック委員会には、食品添加物、遺伝子組み換え食品、残留農薬、有機農産物などのほか、水やチョコレートなど、30くらいの部会があります。これまでの参加は日本政府代表のみで、オブザーバーとしては、テーマに応じてメーカーの代表が参加する程度でした。
 私たちは1998年の12月から、関連するあらゆる部会に参加しています。すべての部会に出たいのですが、そうすると参加旅費だけでも大変ですので、食品添加物、遺伝子組み換え食品 、有機農産物、残留農薬そして飼料に厳選して、必ず参加しています。
 このような国際会議で目立つのは、アメリカとEUの対立です。日本はあまり発言をしないで、最後にアメリカに付くというパターンが多いのですが、最近オブザーバーとして私たちのような消費者団体が参加してきたため多少変わってきた、と行政の担当者自身が言っています。


 今回の幕張での会議でも、厚生省はかなりEU側に近い発言をして頑張っていました。沖縄サミットの首脳間でこの問題の方向性を決めるのが期待されましたが、結局次の国際会議に先送りされました。
 新聞などに報道された沖縄サミットでの記事を読みますと、クリントンさんは遺伝子組み替え食品は危険性が証明されない限りは現状のままで良い、EU側はシラクさんが代表して、安全性が確認されない限りできるだけ用心深く規制をしていくべきだと発言したということです。同じ問題で、これだけスタンスが違うんです。
 国際会議に直接参加して非常にメリットがあると思ったのは、議事運営が民主的でやたらに採決はしないことです。できる限り議論を尽くして合意を得ようと努力するんですね。採決になった場合には権限を持っている国の代表も、オブザーバーである消費者代表も、発言は同じように取り扱われます。
 ですから、消費者団体である私たちができるだけ多く発言し消費者の意向を伝えたいと、あらゆる会議に臨んでいるんです。そのためにも英語力に長け、問題意識をきちんと把握できる若い方の参加が待たれます。
 そうした国際活動のひとつとして、私たちは「不安な遺伝子操作食品」というビデオを作りました。毒素が組み込まれた遺伝子組み換えジャガイモの葉を食べた虫が、最初は勢いがいいのですが、だんだんと弱ってきて、最後は足をばたばたさせて動かなくなってしまう様子を撮り、編集したものです。
 このビデオの英語版を各国政府代表に渡したり、中国語、韓国語、タガログ語版なども作りました。
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