pre index next
P.02

「このー! ソーリーとかサンキューという言葉はどこに行ったのじゃー」相手を責めては自分の心を汚すだけだと知りながら、こみあげてくる怒りのかたまりと戦う私であったのです。
 まず洗いものを次の日に持ち越したくないという自分の価値観と、そういうけじめにとらわれない相手との違いが原因なのだと言いきかせても、何か釈然としません。
 そこで、異文化交流専門の親友に相談しました。
「これはね、文化の違いなのよ。アメリカ人は、自分がすることの優先順位は自分で決めるように、小さい時から教育されているから、すぐやってもらえると期待しないで。何時してもらえるかは相手に任せないとネ。すぐするかもしれないし、ずっと後でするかもしれない。日本人は、頼んだらすぐやってもらえると思うけどね。日米のカップルの多くが、この問題ではてこずっているわ」
 なるほど、なるほど。そうか、日本でも昔、コマーシャルで「今やろうと思ったのに」という男のセリフが流行ったことがありました。たぶん、奥さんから「あなた、あれやってくださった」などと催促
された男の心のつぶやきだったと思います。
 日本人同志でも男性と女性の文化の違いがあったのか、などと思いつつ、でも日本の男は黙っているけど、アメリカの男は何かひとこと言うのだと、また責める心に悩まされながら、異文化を理解し受け入れていく努力の毎日です。
 日本人のコミュニケーションは双子のコミュニケーションといわれています。おなじ親で、同じ家に住む双子は、いちいち説明しなくてもコミュニケーションがとれます。その正反対なのがアメリカ。多種多様の言葉、習慣を持った人々がコミュニケーションするのですから、いちいち明確にする必要があるわけです。
 アメリカでは「何年の何月何日から何日まで、あなたの家に滞在した時はありがとう」と書きますが、日本語なら「この度はありがとう」で通じてしまう。こんなわかりきったことをなぜまたくどくどと書くのか、面倒に思うのが日本人。
 アメリカ人は主語もクリアーに、目的語もクリアーに、時間的にもクリアーに文章を構成するので、どんな人でもはっきりと実態がつかめるようになっ
pre index next