pre index next

★赴任してみたらどんな感じだった?
 私は5年生を担任したんですけど、素朴で明るい子どもたちでした。5人の5年生はそれぞれトランペット・トロンボーン・ホルン・ユーフォニューム・チューバを吹いているのだと教えてくれました。「先生は何の楽器の指導ですか。」なんて目をキラキラさせて質問するんで本当に困ってしまいました。さっそく、吹奏楽担当の三井先生に「何の楽器が得意ですか。」と聞かれて「何もできないんですけど。」と答えると「全員の先生に一つのパートを指導していただきます。どうしましょうか。」ということでした。「ええと、リコーダーに一番近い楽器は何ですか。」と聞いてみると「クラリネットです。」ということで、何も分からないままクラリネットを指導することになりました。
 練習は、放課後3時30分から4時45分まで水曜日を除く4日間毎日ありました。早川は山の中の町ですから山菜が豊富です。5月3日に「山菜祭り」というのがあって、その舞台に毎年早川南小の吹奏楽が出場しているということでした。6年生が抜けてしまい新しく四年生が仲間入りをした編成で
したが、バンド・マスターを中心に熱心に練習していました。「明日があるさ」と「キティキティ」「ナンダカンダ」だったかな。
★クラリネット吹けないのに、指導はどうしたんですか?

 6年生の美里さんに、「私も練習したいんだけど。」って言ったら、楽器庫から余っているクリネットを持ってきて、グリスの塗り方、楽器の組み立て方など親切に教えてくれました。最初は音がちっとも出なかったですね。「あ、美里さん。シの音が出たかな。」て聞いてもらうと「まだですね。」なんて厳しく言われてしまう。子どもたちの音に比べて、私の音はいかにも変な音で「どうしてこんなに音が違うのかしら。」と言えば「私たちのは楽器がいいんです。先生のは安い楽器だから。」と慰めてくれたりしました。で私はちっとも指導なんかしないで自分の練習ばかりしていました。ベスト イン クラシックという教則本があって、それを順番に練習していくんですけど、担任している5年生が「先生どこまで進んだ、がんばって。」て励ましてくれたけど、この頃は楽しくなかったですね。
pre index next