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●そういえば、いつかの同期会で、某君がきみに思いを寄せてたって言っていたぞ。
○清水 ああ、彼ね、知ってたよ。そういうの直感的にわかる。
●そういうものかね。
○清水 だからヤバイと思って近づかなかった。よかったよかった。
●こうなったらついでに聞いちゃうけどさ、女の子で好意を感じてた子がいた? 大丈夫、もう時効だよ。 
○清水 隣の席にいた子で・・・。ほら、剣道部にいて、初段は絶対とるって言ってた・・・。
●お、奥住さん! なんだかんだ言いながらちゃんと見てたねえ。そう、彼女は女の子に珍しく武人で、本当は応援団長もやりたかったって言ってたくらいの立高健児だったものね・・・。でもその話、なんとなく出来すぎてるなあ・・・。やめた。クラブはどこ?
○清水 柔道部に1年のときだけちょこっとね。夏には泳いでばっかりいたら、おっかない同期の部員に「出て来い!」って怒られ、怖い奴がいる
のはいやだなあと行かなくなった。
●柔道部で怖いって印象は森(耐介)とか伊賀(維津雄)だったかな。白井(英彦)はやさしかったし・・・こないだ亡くなった長谷川(秀行)も柔道部だったんじゃない?
○清水 そう、長谷川が亡くなったと聞いて、どこかでいっしょだったと思い出した。でも伊賀が怖かったなあ、オレ。
●伊賀は黒帯でしょ、そのうえ足が速くて重心が低く、地面に吸い付くような走り方をしてた。だから体育のラグビーで、彼があのがっちりした身体でボールを持って走り出すと誰も止められない。寡黙で男っぽかったけど、演コンで役者なんかやったくらいだから、いわゆるコワモテじゃないんだよ。
○清水 ともかくオレ立高時代は毎日きちんと登校し、授業が終わると当然のごとくすぐに下校しなければならないと思ってた。学校には授業に出るしか権利はないなんてね。それでも心は勇躍闊歩していた。
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