pre index next

メーカーなどが、自宅でお風呂に入れます、などと宣伝していますが、あれは座位の保てる人の場合だけです。ゆったりとした浴室のない日本の家屋の場合、二人も三人も付き添うこと自体、難しいのですから。そういうことから社会的な介護の要望が高まってきたわけです。また、高齢の夫婦だけで生活してゆくのもだんだん大変になっていく、となれば、ヘルパーの派遣が不可欠になり、そちらの対策も必要になります。
 こんなわけで、徐々に介護は内々だけでするものだ、という締め付けのようなものはゆるんできたのですが、まだまだ、例えば近所に子ども夫婦がいるとか、同居しているとかいう場合ですと、それだけでもう他人に頼めないといった状況があったのです。特に、在宅の女性の負担が大きいということがありますね。こうした様々なことから、介護を社会的なものにしていこうという方向になってきて、介護保険というものが導入されるようになりました。介護保険もまだいろいろな問題はあるのですが、まあ、なんとか少しずつ社会的な介護へと向かいつつありますね。
 私の考えというか、皆さんにわかっていただきたいのは、身の回りのことが大変になってきた高齢者が自分の家で暮らす、またこうした人たちを家族で介護するということが必ずしもいいことであるとは限らないということです。本人の状態、家族の状況などを考えながら介護の方法を選択していかなければならない時代になってきている、そんな認識を持っていただきたいな、と思います。
■生きていくことが仕事だ

片山 どうもありがとうございました。次に大串君に話をしていただきます。大串君は産経新聞社で「高齢社会をより良く生きる――アクティブ・ライフキャンペーン」というのを7年ほどやっていて、高齢者問題について幅広く取材をしています。その取材経験を踏まえて、これから僕たちが否応なく突入していく「老後」をめぐって、事例報告を交えながらお話ししていただきたいと思います。
大串 私は三年間男子クラスで、女性には縁がなかったのですが、今日もどっちかというと男の立場からちょっと話をしていきたいと思っています。
 私も30年新聞社にいましたが、15年間は事件記者で事件ばかり追っかけていました。今回の「アクティブライフ・キャンペーン」というのは「生活情報センター」という部署に移った七年前に始めたものです。広告も取れなかった紙面を作っていくというのが私の仕事で、そのとき、「シルバーマーケット」ってなんだろうという課題を与えられたのです。その当時、人口の10パーセント、1900万人が65歳以上の方々だったわけですが、そのうち10パーセントが要介護、寝たきりだとすると、後の90パーセントの人は何をしているのかな、と考えたのです。広告営業からいって、マーケットの開発といったことを考えたときに、その九割の人を対象にしなければいけないのじゃないかと思ったのですね。そういう人たちが、こういう社会の中でどうやって生きていくのか、力強く生きていくにはどう
pre index next