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書くチャンスも与えられた」と言ったのです。その時に、ひとつひらめいたのは、「障害は個性だ」という言い方でした。『五体不満足』を書かれた乙武洋匡さんは「ひとつの特徴かな」という言い方をしましたが、「特徴」という言葉もかなりビビッドな言い方です。、それを特徴のひとつとしてとらえると、高齢もひとつの特徴、「個性」だと思うと、ある意味で少し開けてくるものがあるかもしれない。高齢者イコール障害者、イコール個性と、こうとらえると、考え方も広がってくるんじゃないかと思いました。
 それから、その当時福祉車両を出していたトヨタなんかに広告をとりに行ったんですが、なかなか出してくれません。若者の障害者のことを書かないと出してくれない。何か物理的なことで障害者になった、そういうイメージだったんですね。六、七年前の話ですが、高齢者が障害者だという認識はあまりなかったんですね。二年後にやっと広告が出たんですが、明るいおばあちゃんが、車椅子があまり見えないように乗せているものにしたいということだったんです。元気にピッと生きているというイメージですね。あっ、世の中、そんなふうに変わってきたんだなと思ったんです。
 時間が無くなったので、ほかの事例は後半に譲り、この辺で強引に結論にもっていきます。ボランティア団体「さわやか福祉財団」を率いている堀田
力という人が、「自我のするめ」という言い方をしているんです。するめは硬くなっちゃって、噛んでも味が出たり出なかったりする。とにかく会社の中で追いまくられてやっているうちに、自我がすり切れる。そういう状態を「するめ」というのですが、そういう人生を送っていれば、考えることをしなくなるんですね。いわば、活力のある頭が無くなるということだと思うんです。僕ら今五十五で早期退職の節目にいるわけですけど、自分から思い切って飛び込んでいけないというのは、自ら「自我のするめ」状態になりつつあることを自覚しないで、ひたすらハードルだけを見ている状態ではないかと思います。
「アクティブライフ・キャンペーン」の提言コンクールをやったのですが、毎年七〇〇通からの作品を読むのが楽しみでした。優秀賞よりも、落選した人たちの心の雄たけびと言いますか、本音がズバリのぞけて立ち昇るエネルギーに圧倒される思いがして、作品としてはまとまりがなく荒削りですが、本当はそっちのほうが私は好きだったんです。しかし、そういうものはなかなか外へ出てこない。そういう意味では、老人というか、高齢者というかなかなか声を発すれども届かない、そういう人たちの声を何とか表現していくのが私の仕事であったし、生涯現役であるとすれば生涯ウオッチャーになれれば、それで御の字だなと思っております。
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