pre index next

■私たち自身の声で福祉を変える

司会 ここで、現在介護をしている方の状況などを伺いたいのですが。
澤本登代子 私は仙台で自分の母親をみています。初めは在宅でしたが、現在は自宅の近くの、とてもよい施設に入ることができました。在宅でみていると、どうしても追い詰められた気持ちになってしまうのですが、施設だと気分的にも離れて見ることができるので、優しい気持ちで接することができるんですね。近いところなので、しょっちゅう顔を出しています。先日、母の部屋を片づけていましたら、例えば、「ショートステイというのは泊まりにいくこと」などというメモがいろいろ出てきまして、これは記憶の衰えをなんとか食い止めようと書きとめていたのだと思うのですが、母は母なりに衰えていく記憶をつなごうと一生懸命だったんだと思って胸がいっぱいになってしまいました。
司会 いいお話をありがとうございました。
高橋愛子 単身、夫婦にかかわらず、子どもの世話にならずに一戸建て住宅で老後を過ごすというのは、経済は別にしても物理的に難しい。かといって現在のような個人への訪問介護では、ほとんど隠遁生活になってしまうのでは、という不安があります。
こういう場合でもいきなり介護される老後でなく、徐々に、周りの助けを借りながら、なるべく自分らしく老いたいと思うのですが、そういう点でスウェーデンのケアハウスというものに魅力を感じています。同じようなものを日本で探すとなると、かなり高額(月30万円くらい)になってしまいます。今後そうした施設なり、援助なりが福祉の制度としてできてくるでしょうか。
白井 スウェーデンでは、地域計画の中に住宅が組み込まれていますから、団地の中に様々な高齢者対応型の住居があります。これを参考にしたケアハウスというのを日本でもつくったのですが、なかなか普及しません。今、各地で団地の建て替えが始まっていますが、そこにぜひケアハウスを建ててほしいというのが私の願いです。住み慣れた町で、公営住宅の家賃程度で、必要なサービスを受けながら生活していけるというのが理想だと思います。実は介護保険になってサービスが受けやすくなった面はあるのですが、市場原理に任されている弊害もあって、よいことばかりとはいえない。こんなわけでまだまだ理想からは離れていることも多いけれど、私たち一人一人が、自分の町の福祉計画はどうなっているのか関心を持って、どんどん発言していくことによって、福祉はきっと変わっていくと思っています。
pre index next