38歳の時に、米国の宣教師ドネル・マクレンさんが石川県の松任市に来ないかと、お誘いの手紙を英文でくださいました。自分の本来の使命は教会にあることに疑念の余地がなかったので、ためらいつつも引き受け、7人家族で移住の決断を固めました。彼らが用意してくれていた住まい兼集会所とは、泥壁造りのおそろしく古めかしく、そればかりか二軒長屋のしろものでした。浄土真宗の盛んな里とあって、キリスト教と聞いただけで敬遠されて貸してくれる人がいないとのこと。そんな松任市の存在を知る人は恐らく少ないでしょう。正直、私も最初それがどこであるのか見当もつかない始末でした。石川県の県庁所在地金沢市に隣接する、見たところ何もめぼしいものがないかのような、あるものはコシヒカリを産する田んぼばかりの平凡で垢抜けしない、そんな町でした。ところがどうでしょうか、二年前に発行された松任市の広報を見て、目を疑いました。大見出しで「松任市が二年連続、総合力で全国第二位」と大書され、経済専門誌の「99年版ニッポン全694都市ランキング」で全国第二 |
位だと言うのです。快適性、経済力、成長度の三指標の評価で決められるとのこと。第一位の東京都の港区に次ぐ評価を得ているとのことで、何か狐に鼻をつままれた気がしたものです。
そう言われてみれば、そうかもしれないと思われる節もないわけではないのですが、まあ興味ある方は一度訪ねてみられたし。「朝顔やつるべとられてもらい水」の千代女の俳句で、もしかしたらご存知の方もあるやも。朝顔は市の推奨花の一つになっており、8月の上旬には盛大な朝顔展が開かれて、大輪の花を競っています。家内の父親のキリスト信仰の友が、退職の暇にまかせ、手がけて二年目にして直径20センチの大輪の花を咲かせたというので金賞を貰う快挙がありました。市の名称の説明が後になりましたが、松任(まっとう)市の名の由来はどうやら、承平5年(西暦953年)で、三集落が一箇所に集まり、物資集散の市を立てることが考えられ、国司松木氏の勧告によって三集落が合併し、町名を松木氏の意図に任せるという意から、「松任」と名づけられたといわれます。 |