pre index next

7 英才教育と音楽
 私の子どもたちはピアノを習っていましたが、ピアノの先生に妻がバイエルをどうしてやらないのかと聞きましたら、何ゆえバイエルなのかと不思議そうな顔をして、先生が何曲かいろいろ弾くのでその中から子どもが好きな曲を選んで、それから始めましょう、と言われました。その時にバイエルから型どおりにピアノを始めるのは日本だけなのだと初めて知りました。テニスもスキーもやりましたが最初に子どもが好きなようにやらせて才能が少しでもあると見ると徹底的に教え込むといったやり方です。しかも徹底的に子どもを誉めます。おかげで三男はテニスがすっかり上達し日本に帰ってからも夢中になって、ついには関東ジュニアのランキングが取れる腕前にまでなりました。ルーマニアはコマネチで知られるように体操が盛んな国ですが、これも小さい時から才能のありそうな子どもを選んで徹底的な英才教育を施した結果です。
 ルーマニアは音楽が盛んです。特に寒くて長い冬は毎日のようにコンサートが開かれ、家族と一緒にコンサートによく出かけました。そのおかげで私達一家はすっかりクラシック・ファンになりました。ルーマニアが19世紀の末に生んだ偉大な作曲家でポロンベスクという人がいます。トランシルバニアのクルージュ出身でウィーンで音楽を学び、ルーマニア独立運動で愛国的活動をして30歳で若くして亡くなりましたが、彼の作曲した曲にバラーダというバイオリン協奏曲があります。哀調を帯びたメロデイーで大好きな曲の一つです。コーラスも素晴らしくマドリガルという聖歌隊のコーラスは欧州では有名です。ミュンヘン交響楽団にいた名指揮者チェルビダッケもルーマニアの人です。ルーマニア人は数学と芸術的才能があり、数学では常に国際コンクールで入賞していますし、イコンやガラス絵も有名です。パソコンのアイコンはこのイコンに由来するもので、マリアやキリスト等の宗教がモチーフになっています。アンチ・テアトルの劇作家で「授業」を書いて有名なイヨネスコもルーマニア人です。
pre index next