浪人時代通った予備校に、古文を教える片山先生という名物先生がおられた。その先生から自分は古文の楽しさを教わった。特に彼は平家物語の合戦場面を、臨場感たっぷりと語ってくれた。彼の表情豊かな語り口を今でも鮮やかに覚えている。
「よっぴいて、ひゃうと射つ」
「矢をひぃふっと放ち」
彼は「ひぃふっとはひゅっと発音するんですねえ」とおっしゃった。その臨場感がたまらなく好きだった。
平家物語の世界に楽しく入るきっかけは片山先生に作ってもらったけれど、それとは別に自分たちに |
なじみの深い多摩地方の地名を名乗った多くの人たちが、頼朝の御家人となって、平家打倒の征西軍に加わって行き、彼らの活躍が物語にたっぷりと描かれているのも物語を読む楽しさを倍増してくれた。京王線の平山であったり、八高線の金子であったり。西武線の村山も然り。苗字からいえば、丹治君も大串君も武蔵武士の末裔かもしれない。そうだとすると両君の祖先も征西軍に参加して活躍している。我が家のある八王子から
も横山党が駆けつけ、大いに奮戦している。読み進んでいくうちに、なぜか仲間の活躍を内心応援しているような錯覚に陥ってしまう。
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