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この年齢になって分かった「大人の修学旅行」 

 奈良はそれぞれ見物したい場所があるので、永野さんがA案からE案までいろいろな行程を組んでくださり、早川、尾崎両氏とぎりぎりまで細部にわたり検討。バスの中で最終案のプリントが配られ、それぞれ行きたいコースを選び途中下車し最終的に夕方近鉄奈良駅で全員乗車ということに。私は一番希望者の多かった「斑鳩の里、西の京のコース」を選んだ。
 最初は全員法隆寺下車。のどかな田園風景の田舎道をぞろぞろ歩いて藤ノ木古墳を見てから法隆寺の境内へ。生まれて初めてエンタシスの円柱を見たのはここだったっけ……とはるか昔を思い出しながら、五重塔、金堂、大講堂、百済観音像、夢殿と駆け足で見て回った。百済観音像のスラリとした長身の姿はまるで初めて見るような気がして新鮮だった。中宮寺の弥勒菩薩像とももっとゆっくり対面していたかったが、次の予定があり後ろ髪を引かれる思い。法隆寺だけでも半日以上は時間をかけたい気分だったが、「奈良公園コース」の人達は私達よりももっと短時間で切り上げ既にバスで発ったのだから贅沢はいえない。
 お昼を過ぎたが食事をする時間がとれず奈良名物の柿の葉寿司を求めてから市内バスと電車を乗り継ぎ、西の京薬師寺へ。一年前に再建されたピカピカでまばゆい大講堂、二十数年前に再建された西塔や金堂等が朱色も鮮やかにそびえ立っていて見応えがあったが、なかでも唯一焼け残った東塔の古色を帯びた優美な姿には特に圧倒され、いくら見ていても飽きなかった。古ぼけた東塔のほうに断然惹かれたのは、やはり歳のせいか? ここでも修学旅行の生徒達を見かけたが、なんとその人数の少ないこと! 私達の時代はゾロゾロ大勢という印象だったのに今はなんとこぢんまりしていることか! 雰囲気が当時とはまるで違っていた。
 薬師寺から歩いて唐招提寺へと向かった。一時半も過ぎてさすがにお腹もすいてきたがお弁当を開く適当な場所が見つからず皆だんだん口数も少なくなってきた頃、道路脇に石碑のある空き地を見つけやっと昼食にありつき、ほどよく酢が利いておいしい柿の葉寿司をパクパク。食べ終わった頃に、若井、白井さんが通りかかり合流。あいにく唐招提寺は「平成の大修理」中で何も見られず、歩いて行く予定だった垂仁天皇陵も時間がなくなりカット、三時には待っていたバスに乗り込む。三時半に近鉄奈良駅で全員集合して楽しかった奈良の都を後にして京都へ戻った。

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